「私は家で、部屋に『閉じこもって』6年を過ごした。友達は一人もいなかったし、今もいない。今の私はすべてが必然だったと強く信じてる」── 引きこもり時代に白黒写真のカラー化という夢を見つけ、今や世界中で引っ張りだこのブラジル人アーティストによるAMA!

元スレ:IamA professional digital colorist. I restore and colorize black and white photographs, working with several museums, TV stations, publishers, and institutions from all over the world. AMA!(2017/06/24)

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photo credit: Romain [ apictureourselves.org ] Gamme via photopin (license)

(OP)
ハイ、みんな!何度もリクエストされたから、AMAをやることに決めた!
私の名前はマリナ・アマラウ。22歳でブラジル在住。ある日、白黒写真を復元して色をつけることで、歴史への魅了とフォトショップのスキルを組み合わせようと決めた。そうすることで、人は歴史を新しい色彩豊かな観点で見られるようになる。写真の背後にある価値を認識することで、写真が持つ物語に敬意を払って保存することで、素晴らしいディティールに注意を払うことで、オリジナルのもつ本質を保持することで、写真はリアルになる。すべての完成品は、オリジナルの色と雰囲気を忠実に再現するために、長く綿密な調査を経て、必要があれば各分野の専門家の意見を参考にしてる。私の仕事の幅は、シンプルな肖像写真から複雑で詳細な写真に至るまで、様々な歴史的時代から受け継いだ、広い範囲のトピックをカバーしてる。
プロになって2年。世界中のいろんな出版社、雑誌、テレビ局、制作会社、美術館、団体と仕事してる。『WIRED』が私と仕事に関する素晴らしい記事を書いてくれた。
今はエキサイティングな個人のプロジェクトに取り組んでる。私の考えをここでシェアできてうれしい!

証明:https://twitter.com/marinamaral2/status/878685669580840960
(訳注:一部、重複する質問・回答をひとつにまとめています。途中OPのTwitterからの引用を含みます)

Q. 君がたったの22歳だなんて知らなかったよ!

A.  9月で23歳!

Q. いつから写真の色付けを始めたの?

A. 2015年に、可能な限り最も行き当たりばったりなやり方で。
ネットをしてたら第二次世界大戦のカラー写真コレクションに偶然行き着いて、その技術を再現しようと決めたが最後、決して立ち止まらなかった。

Q. 君に家族写真を送ってお金を払ったら、カラーにしてくれる?

A. もちろん!
家族写真のカラー化も依頼可能:http://www.marinamaral.com/contact/

Q. 写真に色をつけるとき、どの色を使えばいいかどうやってわかるんだい?

A. ほとんどは歴史的調査に基づいて。同じ時代の線画や絵画や、見た目を説明した記述を見つけられる。例えば軍の制服の場合は色の情報を与えてくれる資料がたくさんあるし、有名な風景や状況、建物や看板やラベル、歴史的な物体……も同様。どの色を使えばいいか、かなり良いアイディアを得られる。でもときどき、当てもない物体を色付けするときには、たくさんの推測が必要になる。例えば普通の服、帽子、靴、椅子、などなどね。

Q. 彩色には一枚あたりどれぐらいの時間がかかるもの? 

A. かかる時間は、その写真の複雑さによって本当にまちまち。シンプルな肖像画なら40分で色付けできるけど、もっと複雑な写真なら数日。私は自分の目が結果に満足するまでは絶対に調整を止めない。かなりの完璧主義者だから。

Q. なにかオススメのテクノロジーがある?マウス?タブレット?ソフトウェア?

A. フォトショップがベスト。少なくとも私にとっては。他のソフトは試したことがないけど。タブレットを使ってる。ワコムのすごくベーシックなやつ。

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Q. チュートリアル動画をYoutubeにアップする予定はある?

A. Youtubeにチュートリアル動画をアップする予定はないけど、それよりもっと大きな計画がある!😉 今は詳しいことは言えないけど、保証する。近いうちにこの計画を実現させられる人たちと仲良くなろうとしてる。
実はプロセスの数段階を見せたショボい動画をアップしてあるんだ。でもこの動画はほんと役立たず。今計画してることを実践段階に入れられたら、絶対みんなに教えるね。



Q. 全部を出来るだけ変な色で塗っちゃいたい誘惑に駆られたことある?「このキリン?ピンクにしちゃお」

A. ハハハ、まだやったことない。でも確かにトライすべきかも。

Q. 「手彩色」風に再現するために、わざとカラーパレットを淡い色に限定してる?それともグレースケールのオリジナル写真に上塗りした時に上手くいくのが淡い色ってだけ?

A. リアリズムが究極目標。だから作業中に手彩色風のことは頭にない。カラー化のクオリティーはオリジナル写真のクオリティーと深く結びついてはいるけど。実は飽和色を使うほうが好み。

Q. カラー化に使っている系統的なプロセスや一定のやり方がある?例えば特定のRBG色を顔に使うとか。それとも単に「出たとこ勝負」で、気に入るまでスライダーで遊んでる?

A. 私はあまり方法論的じゃない。だからレイヤーとアジャストメントはいつも取り散らかってるし、規定の道に従ってはいない。全てのパーツが思い通りの見栄えになるまで色で遊んでるだけ。

Q. ガラスネガのひび割れを編集したり、背景の邪魔な物体を消したりといった編集をする?それとも写真をありのままにしておく?

A. 「邪魔な物体」を消したことは一度もない。私は歴史的な記録を扱っていて、色を付ける(出来る限り正確に)以外のどんな形の細工もしたくないから。でも引っかき傷やひび割れは取り除いてる。

Q. 今までにカラー化した写真の中でどれが一番のお気に入り?

A. 難しい質問。でも、ホロコーストの最中、アウシュビッツで殺害された少女がその一つだと思う。この写真を国際ホロコースト記念日にアップした後、たくさんの人にシェアされたこと、この写真を見てもらえたこと、反応してもらえたことはとても印象的だった。口に血のついた彼女は泣いていて、これから自分の身になにが起きるのかを知っている。私の目標は、この写真に人間味を加えることだった。白黒写真ではそれが失われていると思って。仕事を終えて初めて彼女の顔を見たとき、ショックだった。彼女が私とまったく同じ、人間であったことをはっきりと理解したから。彼女には夢も恐れも、友達も家族も、大志も将来もあった。でもすべてを失ってしまった。

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Q. こういう人工知能による白黒写真の自動色付けを見てみたことあるかい?プロが自動化の結果を見てどう思うのか興味あるんだ。

A. いいと思う。けど正直、私たちが手作業でやっていることを、近い将来AIが超えられるとは思わない。そういうのを開発しようとしてる科学者グループとときどき連絡を取ってる。彼らの目標は人の技術を越えるものじゃなくて、人の作業にかかる時間を減らす追加支援となるものを作ること。

Q. どこでどうやってそういう技術を習得したの?ヴィンテージ写真のカラー化や復元に自分で挑戦したいと思ってる人たちにどんなアドバイスをする?

A. たくさんの練習を積み重ねることで。
12歳ぐらいの頃から、時間があるときはいつもフォトショップを使って遊んでた。だからこれを始めたとき、フォトショップで実現できる可能性についてはかなりいいアイディアがあった。でもどうしたらリアルな成果を達成できるかは全然見当もつかなかったから、いろんな専門的技術分野、例えば物理学、写真術、伝統的画法、などなどから情報を寄せ集め始めた。そして決して練習を止めなかった。1日たりとも、フォトショップを開いて少なくとも一輪の花に彩色しない日はなかった。だから私からのアドバイスは、たくさん練習を積むこと、自分の弱点を見つけること、現代の写真を観察すること、自分の最新作の質に決して満足しないこと。

Q. どうやってクライアントを見つけたの?それは君のフルタイムの仕事?僕はフォトショップに精通したデザイナーで、写真の復元や色付けはたくさんやってきたけど、お金になるなんて思ってもみなかったよ。

A. これがフルタイムの仕事。私がクライアントを見つけたわけじゃない。彼らが私を見つけたの。ありがたいことに、すでにこの分野で名前を確立してるから、必死になってやることを探す必要はもうない。仕事の機会は自然にやってきてる。

Q. あなたが一番興味深いと思う歴史上の紛争は?

A. 私はずっと第二次世界大戦に夢中だった。でも今魅了されてるのは第一次世界大戦。それ以外では、中世や、当時起きたすべての出来事に関して読むのが大好き。プロジェクトに携わって、世界のいろんな場所で起きた、その存在すら知らなかったたくさんの紛争を知る機会を与えてもらった。日々新しいことを発見して、学んでる。

Q. 歴史家たちから何か反応をもらったことある?あるとしたら、ポジティブな反応?ネガティブな反応?

A. ある。彼らは私がしていることの重要な一部。私は専門家じゃないし、歴史的情報や記録のような、与えられた物体の本来の色を再現するのに必要な描写が含まれたものを入手できないことが多々ある。そういうときは専門家の助けを必要とするし、彼らはいつも惜しみなく協力的でいてくれる。

Q. 写真のカラー化の長い作業を終えたばかりの時に、歴史家がその写真を見て、色が違うと言ったことある?

A. うん。それにそういう時が好き。正しい色を使ってない写真を世に出すよりも、数分間色を調整するほうがいいから。

Q. 独裁者や殺人鬼の肖像画をカラー化するのは妙な感じ?

A. 例えばヒトラーの顔を何時間も見つめて過ごすのはちょっと変だけど、彼らもまた歴史の一部!
 
Q. 以前白黒写真のカラー化に挑戦した者として質問。肌の色をもっとリアルにするコツがある?

A. 光源が肌とどう影響し合うか、周囲の環境と物体が肌にどういう影響を及ぼすか、それを理解しようと努めながら現代の写真を観察すること。

Q. 親戚の個人的な古い写真をカラーにしたことある?その瞬間を実際に生きていた人からどんな反応をもらった?

A. 祖母の結婚式の写真を何枚か修復したことがある。祖母はとても気にいってくれた!でもこの手の仕事には問題がある ── 親戚の中に、あなたが生きるのに必要なのは空気だけだと思っていて、やらせたいと思ってる仕事に対価を払おうとしない人がいるのはよくあること。

Q. 白黒写真のカラー化が目指してるのは、カラー写真を描くこと?これを聞いてる理由は、カラー化された写真の中には、写真のクオリティーや特色を失っているように見えるものがたくさんあるから。

A. 少なくとも私の場合は、リアルさが究極目標。確かにほとんどのカラー化写真が偽物っぽく見える。でもそれにはいくつかの理由がある。趣味でやっている人も多いし、歴史的正確さは気にも留めてない人も多い、リアルな結果を達成したいと思っていない人も多い、などなど。私は常に、カラー写真に見えることを目指して写真を修復してる。

Q. これまでに依頼を断った画像がある?

A. 十分な出来栄えにならないだろうとわかってるときは断ってる。数ドル失うほうが、ひどい写真を提供するよりマシだから。

Q. 写真の色付けを始めたのは2015年からだとさっき言ってたけど、その仕事で成功するまではどんなキャリアを思い描いていたの?

A. 道に迷ってた。私には変わった過去があって、ある「決断」をしたせいで、将来の見通しが全くないようなスパイラルに陥っていた。いつもうつ状態、不安、その手の問題に苦しんでた。祖父が2008年にこの世を去ったことが、ある意味転落の始まりだった。そのせいで高校すら修了せずに中退した。アメリカ(家庭教育が合法で普通な国)ではよくある話かもしれないけど、ここブラジルでは間違いなく自分を社会のはみ出し者にする行為。私は家で、部屋に『閉じこもって』6年を過ごした。友達は一人もいなかったし、今もいない。今の私はすべてが必然だったと強く信じてる。だってこの期間中に、今の私となるための基礎を無意識に築き始めていたから。この時期に英語を勉強し始めた。それは今の私にとって欠かせないもの。Youtubeでフォトショップのチュートリアルを見て何時間も過ごしたのもそう。2015年に国際関係論を学ぶために大学に行ったけど、情熱は感じなかった。ありがたいことに、白黒写真のカラー化が私の人生に入ってきてくれた。それが起こらなかったら、今自分が何をやっていたか想像もつかない。

Q. 僕は白黒写真が大好きなんだ。個人的な楽しみ以外では写真をカラー化する必要はないと思ってる。これについてどう思う? カラー化される必要があったと思う写真がある?

A. アウシュビッツで殺害された少女の写真について考えて。私が文字通り毎日毎日、どんなに多くのメッセージを受け取ってるか、あなたには想像もつかないはず。カラー化された写真を見てどれだけ心を動かされたかが書かれてる。最も重要なのは、その多くが少女のカラー写真を見て初めて、ホロコーストがどんなものだったか心から理解できたと言っていること。私の写真は学校でも使われていて、私のカラー写真を使い始めてから、歴史の授業での生徒たちの関心がどれだけ促進されたか、教師たちがいつも報告してくれてる。



(OP)
このAMAはこれでお終い。みんなに答えられるように頑張った。みんなにも楽しんでもらえたことを祈ってる!
応援ほんとうにありがとう。今後はSNSでね。もうすぐビッグニュースがあるから。ありがとう!


5「あなたが生きるのに必要なのは空気だけだと思っていて、やらせたいと思ってる仕事に対価を払おうとしない人」ってのはどこにでもいるんですね……(悲)
その他のカラー化された写真はOPの公式サイトでどうぞ。

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