「この映画をちょっとしたロールシャッハテストだと表現した人がいた。僕らはその例えをとても気に入ってる」── 世界中の度肝を抜いた映画『スイス・アーミー・マン』の監督、ダニエル・シャイナートとダニエル・クワンの「ダニエルズ」による初のAMA(なんでも聞いて)!

※注意※ 『スイス・アーミー・マン』の内容や結末、その後などネタバレがあります。


元スレ:We are DANIELS (directors of Swiss Army Man & Possibilia & Turn Down 4 Wut & $tuff) AMA!(2016/08/11)


(OP)
僕らはダニエルズ(『スイス・アーミー・マン』と『Possibilia』と『Turn Down for Wut』と『$Tuff』の監督たち)。AMA(なんでも聞いて)!

略歴:『Possibilia』っていうインタラクティブ短編映画をリリースしたばかりだよ。ここで見られる:http://possibilia.helloeko.com 
『スイス・アーミー・マン』、『Turn Down for Wut』、『Interesting Ball』も脚本・監督した。なのにAMAは一度もやってない!?僕らはredditのヘンなスレッドを愛してる!
真面目な話、僕らに、なーーーーーんでも、聞いて
証明:https://pbs.twimg.com/media/Cpcs90xUkAA9hKP.jpg:large
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(左)ダニエル・シャイナート(右奥)ダニエル・クワン



(訳注:以下、(DS)がダニエル・シャイナート監督、(DK) がダニエル・クワン監督の回答です。ひとつのアカウントで回答しているので、どちらの回答か特定できないものは(OP)あるいは無表記です)

Q. 君たち本当にナイキのCMを監督したの?あのナレーターは誰?

A. うん。
オスカー・アイザックって名前の男だよ(でも彼とは会ってない。彼はイギリスのレコーディングブースにいた。公開を控えた宇宙戦争に関するSF映画を撮影中で)。

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「Q. 一番気に入らないハリウッドの流行りは? A. (クリスチャン) オスカー・アイザックを出演させること。 (オスカー) なんてイヤな野郎だ。」
オスカー・アイザックとクリスチャン・ベールだけど、なんか質問ある?

Q. ダニエルにできて君にできないことって何?

A. この世界にはダニエルが多すぎる。わかるように質問して〜。

Q. 『スイス・アーミー・マン』を思いついたとき、どんなドラッグやってた?


A. なにも。人が変な映画を見たときにドラッグの産物だと思うのはちょっと面白いね。僕らの真実は正反対。ドラッグをやる代わりに変な映画を作る。

(DS) 実はクワンはこの映画のせいでマリファナを吸い始めたんだ。ストレス発散のために。効いたよ。

(DK) ハイになってるときに思いついた『スイス・アーミー・マン』のワンシーンは、現実世界のハンクが窓の外を見ているシーン。ポストプロダクションで付け足したんだ。業界人たちに見せたら混乱しすぎてたから。すごくトリップしてるだろ?男が窓の外を見てるだって!?!?完全にハイな代物だよね。

Q. 撮影中に小休止して、「うわぁなんだこれ。ほんとにこんな映画を作ってるなんて信じられない」って思わなかった?

A. まさに、毎日。
それが僕らがこの映画を作った理由だと思ってるけど。みんながなんでも起こりうると信じられる世界の創造。

Q. 『スイス・アーミー・マン』の背後にあるアイディアはどこから思いついたの?

A. (DS)『スイス・アーミー・マン』はたくさんのアイディアのコレクションだ。説明は難しい。アイディアがどこから来るかって議論に大学の1セメスターを費やせるだろうね。でも、僕らは思考過程を「アイディア・セックス」と表現するのが好きなんだ。他のヒトたちとまさに考えがぐちゃぐちゃに溶け合うまで通じ合うし、「アーハー!(訳注)と言わせるものだから。どういうわけか、数年前に、クワンがオナラジェットスキー死体を僕の友人の湖畔の家で撮影できる短編映画として推してきた。そして僕らの脳は言った。「アーハー
(訳注:「Aha!」とはそれまでわからなかったことを突然理解できたり、探していた問題の解決策を突然思いついたりした瞬間に言う感嘆詞です。「Eureka!」とも言います) 

Q. 『スイス・アーミー・マン』が大好きだよ。リサイクル映画とジェネリック大作映画の世界において、こんなにも新鮮でユニークなストーリーを語るよう君たちをインスパイアしたのはなんだったのか知りたいな。

A. この映画を作るにあたってたくさんのものにインスパイアされたよ。でも特に、最近のアメリカからはほとんど消えてしまった、クレイジーなほど素晴らしい90年代後半の映画たち:
マルコヴィッチの穴
アメリ
ファイト・クラブ
ライフ・アクアティック
アダプテーション
エターナル・サンシャイン
もののけ姫
ウェット・ホット・アメリカン・サマー
(芸術的であろうとしていると同時に、本当にわかりやすく、大衆向けでもある映画たち)

Q. 『スイス・アーミー・マン』を作ってくれてありがとう。今年一番の映画だ。実は7回(!!)も見た。単なる好奇心だけど、このストーリーはどう発展を遂げた?この映画は叙情的で寓話的な美に溢れてる。そしてオナラに。初稿のストーリーと映画になったストーリーは同じ?

A. 7回も!?なんてこった。チケット代ありがとう。$$$
ストーリーは初稿から本当に大きく変わったよ。5、6回大きな書き直しをして、その合間には小さな書き直しも無数にあった。初稿では、ハンクは映画の最後にクルーズ船かなんかに島から救助されてたんだ。ハハ。

(DK)ある点では、僕らはよくある「男が彼女を取り戻そうとするストーリー」を作るんだと思っていた。でも草稿を書けば書くほど、はっきりと気づいてきた…… 脚本家が「キャラクターの声に従う」と言うと馬鹿馬鹿しく聞こえるけど、最終的にはそうなったんだ。ハンクとメニーは、ハンクとサラよりもお互いを必要としているとわかった。ひたすら何度も何度も書き直し続けた。2人が恋に落ちるのを許すまで。一度それを書くことを自分たちに許したら、ストーリーがすごく発展して、やりがいのあるものへと花開いたんだ。だからそれが本当に興味深いターニングポイントだった ── ハンクとメニーが恋に落ちるに任せて、意図せずしてゲイ・ネクロフィリア映画を作ったときが。
The Telegraphより翻訳

Q. ダニエル・ラドクリフとポール・ダノとは、キャラクターについてどう話し合った?


A. クレイジーなのは、2人とも山ほど映画出演経験があって、一方僕らは自分たち史上初の映画を監督していたってこと。だから彼ら自身でキャラクターとの繋がりをたくさん構築だろうとか、なにを質問したらいいかわかってるだろうとか、いろんな意味で彼らに任せてた。たくさん質問されたし、それは僕らにとってなんか変だとか見当違いだと感じるものの方向を変えるのにベストな時だった。彼らに僕らの考えを一度にドンとただ放り投げるだけよりずっといい気分だった。
2人に面白いものを送りつけもしたよ。キャラクターたちが聴いてそうな音楽や、好みそうな本や、ときには彼らが読むべきだと思ったredditのスレさえ(redditでは最高に興味深い特異なキャラクターに出会うものだ)。

Q. ラドクリフとダノが第一候補だったの?素晴らしい配役だったよ。

A. キャラクターたちは数年かけて進化を遂げて、その間に冗談でたくさんの俳優の名前を挙げてた。でも僕らが最初に役をオファーしたのは彼らだった。第一候補。すごくすごくすごくすごくラッキーだった。

ダノ:僕は撮影のきっかり1年前ぐらいに参加したよ。
僕らはかなり初期からダニエル(・ラドクリフ)の話をしてた。あとはいつ映画を撮るかって問題だった。もっと早くに撮ろうと予定してた時があったんだけど、ダニエルのスケジュールに合わせて待つことに決めた。
ラドクリフ:ポールは僕にこんな短いメッセージをくれたんだ。「やぁ、僕はこの映画が素晴らしいものになると思う。この監督たちはすごいと思うよ」でももしポールがそうしなくても、かなり、かなり乗り気になっていたと思う。こんなにすごく独創的で、普通じゃなくて、特別な脚本を読んだら、すごく目につくからね。正直言って。
Business Insiderより翻訳

Q. どうやって、なんで、いつ、シェーン・カルース(検死官役)があの役を演じることになったのか、知りたくて死にそうなんだけど。

A. ただ彼が撮影初日に現れただけさ!ゾッとしたよ。
彼とは過去に顔を合わせたことがあった。共通の投資家たちと仕事してたから。でも僕らの仕事を見に来るなんて思いもしなかった。でも彼が側にいて、僕らにはチョイ役のキャストが必要だったから、彼に引き受けてもらえないか聞いたんだ。
この映画全部が、そういうなんだか非現実的なものだった。

Q. ダニエル・ラドグリフでジェットスキーするシーンの撮影はどれぐらい困難だった?


A. ジェットスキーシーンの撮影に関する記事をどうぞ。
ネタバレ注意:すごく難しかった。

撮影に向けて、僕らはこのシークエンスを安全と撮影しやすさの点から複数に分割した。
  • 100フィートのスキーロープ(船の通った跡が写りこまない最小限の長さのロープ)で引っ張られるダミーにスタントマンが乗っているワイドショット。大波のある外洋で撮影。スタントマンは激しい波によって何度も投げ出された。
  • 死体の尻のクローズアップ。スタントマンがリアルなダミー尻(ダニエル・ラドクリフの本物のお尻がモデル)に乗った。ダミー尻の肛門まで圧縮空気チューブを通して、低速で、穏やかな水上で撮影。
  • ポールがボディボードに乗っているクローズアップ。2分間のワンテイクで一曲丸々演じ通した。穏やかな水上で、だけどかなり速いスピードで撮影。だから水と風が彼の髪に激しく吹き付けてる。
  • ポールが実際にダニエルに乗ってるミディアムショット。ボートは控えめな速度。穏やかな水面。主演俳優たちが怪我する危険を最小限に抑えるために、ほんの数回だけ撮影。僕らの決定的瞬間!
(中略)
5船全船、50人のクルーメンバー全員が作業を中断して、ダニエルをロープで窒息死させない土壇場の解決策を探した。50分後、僕らはダニエルの首に結んだロープを襟の下に隠して、別のロープ(彼のシャツの下を通してベルトに結びつけてある)を襟から出した。これならポールが「手綱を引」けて、最悪でもダニエルのパンツがお尻に食い込むだけだ。 
MovieMaker.comより翻訳

Q. やぁ、『スイス・アーミー・マン』が大好きで、サントラにハマってるよ。映画を通して、音楽がストーリーを物語る大きな役割をしているけど、脚本を書いているときからずっと計画してたこと?それともアンディー・ハルとロバート・マクダウェルと仕事してて自然とそうなった?

A. アカペラ+森の中で見つけられる楽器というのは最初から計画してた。ハンクには頼りないナレーターでいて欲しいとずっと思っていたし、歌っている彼はその自然な延長部分だ。
でも。オーマイゴッド。アンディとロブは僕らの頭をぶっ飛ばして、場外ホームランを打ったよ。アイディアを完全に新しいレベルへと引き上げてくれたんだ。彼らの音楽を映画の特色としてより際立たせるためだけにシーンを書き直したよ。

作曲プロセスには制限があった。「ダニエルズが戻ってきた時、彼らはこんな感じだった。『クールだね。楽器は使用禁止』」(中略)「ダニエルズに進捗を送らなきゃいけなかったんだけど、曲を聴いた彼らはただこう言った。『素晴らしいよ。でも綺麗すぎる。もうちょっと変で、もうちょっと醜くくて、もうちょっと酔っ払った感じにしてもらわないと』」(中略)「僕らは実際に頭を壁に打ち付けた。ダニエルズが求めてるものがわからなかったから」
Consequence of Soundより翻訳

アンディ:ダニエルズはある意味僕らの両手を封じたんだ。あの映画では最後の最後のシーンまで一切楽器を使ってはいけないと言われた。だからあの映画がやってることを見習って、新しいやり方を考え出さなきゃいけなかった。数ヶ月後、僕らはついに、ひとつの声で空間を満たすやり方を見つけた。それによって、すごく心に残り、かつとても美しいものになったんだ。

Q. ジョン・ウィリアムズが作曲した『ジュラシック・パーク』のテーマが、ささやかだけど重大な2つのシーンに現れるよね。あの曲が第一候補/唯一の選択肢だった?使えない場合の代替案が頭の中にあった?

A. (DK) ハハ。代替曲を思いつこうと必死だった。ジョン・ウィリアムズがあのテーマを使わせてくれない可能性は90%だったからね。使えそうな他のテーマ曲を思いつくたびに、それもジョン・ウィリアムズの曲だって気づいてたんだ。
このテーマ曲を選んだのは、シャイナートがある問題を抱えているから。劇的瞬間を僕に売り込む時はいつも、自分がやりたいアイディアを僕に授けようとして歌を歌うっていう。彼のデフォルト曲がこの2つ:『ジュラシック・パーク』のテーマ曲。あるいはSealの『Kiss Fom A Rose』https://www.youtube.com/watch?v=yivLt9cTaio

Q. サウンドエフェクトの作業にはどれぐらいの時間がかかった?その時間のどれだけがオナラ関係だった?


A. サウンドデザインはポストプロダクションの大部分を占めていたよ。たくさんのオナラに時間をかけて、アニメっぽくないリアルな音にしようとものすごい時間を費やした。その後サウンドデザインチームが1ヶ月かけてキーシーケンスを構築しているあいだ、別の効果音アーティストチームがすべてのバックグラウンド音を作った。音のレイヤーが100ぐらいあるシーンもあった。オープニングのジェットスキーシーンで同時に14ぐらいのオナラトラックを使う、みたいなこともあった。サウンドデザイン会社、Unbridled Soundがバッチリ決めてくれたよ。

Q. サンダンスラボはどうだった?なにが起きた?どんなアドバイスを受けた?

A. オーマイゴッド。なんて巨大な質問だ。数日は語れるよ。僕らがあのラボでなにをしたかって話でもある。僕らの映画について数日語った。
脚本家ラボ:クレイジーな脚本家や監督たちとの1対1の3時間フィードバックセッション。みんな言ってることがバラバラだった。励ましてくれる人もいれば、僕らの映画を大嫌いな人もいた。
監督ラボ :映画の4つのシーンを少人数のクルーと予算ゼロで撮影する。練習になるし、出来栄えにフィードバックをもらえる。この4週間!?

└・君たちの映画を嫌った人を知りたいな。

 └(OP) マイク・ホワイト!ハハ。僕らが経たミーティングの中で一番厳しかった。すごく気に入ってもらえると思ってたのに。彼は信じられないぐらい面白い脚本家だから。でも話が噛み合わないだけで、僕らはセッションを早々に諦めた。その後僕らは本当にストレスを感じて、怒って、すごいアイディアを何個も思いついた。
そしたら、1、2年後に突然マイクからメールをもらった。最高に素敵な手紙を書いてくれたよ。協力的じゃなかった自分にどれだけストレスを感じたか。なんとしてもこの映画を作った僕らをどれだけ誇りに思うか。とても謙虚で素晴らしかった。このジェットコースター体験全体の総括だったね。

Q. 最初のあの島は、ハンクの心の「The End」(例えば、完全な絶望、鬱、自暴自棄)?彼はずっとあの家の裏にいたんだと思うから。

A. あの島は現実でも偽物でもありうる。観客としての君の気分次第。この話のリアリティがあいまいでも、ハンクの感情の旅は明らかに見えているといいんだけど。それが僕らの目標だった。彼の心は間違いなくボロボロだった。

Q. ハンクがメニーを殺したの?(映画に描かれてない部分で)

A. 僕はハンクはメニーを殺してないと思う。そう願うよ。もし殺してたらとんでもないことになると思うから。

Q. 映画の最後のシーンの意図は?わざと観客の解釈にゆだねた?

A. どんな解釈もOKだよ。この映画をちょっとしたロールシャッハテストだと表現した人がいた。僕らはその例えをとても気に入ってる。この映画の中(とくにエンディング)に見えるものは、君たちがどんな人かに左右される。少年か、少女か。自分のことを恥じているか、思い上がっているか。冷笑的か、楽天的か、などなど……
でも僕らにとっては ── 僕らは希望ある結末にしたかった。ハンクは自分の羞恥心を乗り越える。ハンクもまた、オナラをするようにマニーをインスパイアする。そしてマニーは世界をインスパイアする。

Q. 今、ハンクは大丈夫?

A. 君はハンクが大丈夫だと思う?僕は彼は今うまくやってると思うよ。(ポール・ダノはこう決定した:セラピーとリバウンドを重ねたハンクは、5年後に、海賊なんかのごっこ遊びをする子ども向けサマーキャンプの指導員になった)

Q. 『スイス・アーミー・マン』の大成功以降、次のプロジェクトに大きなプレッシャーを感じてる?

A. 誰かにとっての大成功は、同時に誰かにとっての大期待はずれでもある。だから僕らが感じるプレッシャーは世界の半分からのだけ。世界のもう半分からはほとんど期待されてない。そういうわけで、かなりいい気分だよ。

Q. 進行中のプロジェクトがなにかある?『スイス・アーミー・マン』と同じぐらい変な映画になる予定?

A. (DS) 新しい脚本に取り組んでるよ。僕は『HOTDOG HANDS』って名付けたいんだけど、クワンはバカなタイトルだと思ってる。納税手続きがどれだけ難しいかがテーマの映画だよ。



(OP)
バイバイ、みんな本当にありがとう!


5今年観た映画の中で一番心に残る作品でした。「Montage」が頭から離れません。
同監督たちの『Interesting Ball』もとてもユニークな作品なので、ぜひご覧ください。

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