今回は高校生ながらNASA(アメリカ航空宇宙局)で働いていたというアメリカ人の青年によるAMA(なんか質問ある?)です。天才高校生の難解な研究にRedditユーザーたちが大混乱。高校生にして彼はどうやってNASAで働くチャンスを掴んだのか。4月に「嘔吐彗星」でのフライトを控える彼の今後の計画とは。

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(OP)
僕は以前NASAで働いていた。それに今度微小重力の中で飛ぶ予定だ。AMA(なんでも聞いて)!

やぁみんな。NASAがやってる研究について興味がある人がいるんじゃないかと思ってAMAをやることにしたよ。
僕は今高校の最上級生だ。突然そこを離れなきゃいけなくなるまで、NASAで6ヶ月間働いていた。来年の4月には今取り組んでいる別のプロジェクトを通じて、「嘔吐彗星」で実験を行う予定だ!

NASAについて、高校について、研究について、大学入試について、あるいは他のどんなことについてでも、なんでも答えるよ!




嘔吐彗星Vomit Comet)は、NASAが軽減重力研究計画に使う航空機の愛称。この用途に使用される航空機は、引き起こし後に放物線状の飛行経路をとり、この際に重力が軽減された状態を作り出すことができる。飛行経路の変更によって、重力軽減の程度を変更することもできる。一般的に、この航空機は宇宙飛行士訓練するために使用され、引き起こしから通常飛行に戻るまでの65秒間のうち、25秒間の無重力状態を作り出すことができる。この際に搭乗者、特に不慣れな者は乗り物酔いによる吐き気をもよおすことが多く、このような愛称が付けられることとなった。
Wikipediaより 

Q. 今宇宙にいるの?

A. 残念ながら、来年4月まで地面の上。:(

Q. どこの嘔吐彗星で飛ぶの?ジョンソン宇宙センター?エリントン?

A. ジョンソン宇宙センター!改造されたボーイング727を使用しているZero G Corporationのフライトと契約する予定だよ。もっと知りたかったらウェブサイトを見て!

Q. 昔の俺の先生が嘔吐彗星に乗ったことがあって、すごく楽しいけど乗る前には何にも食べるなって言ってたよ。

A. アドバイスありがとう。無重力で吐くことを楽しみにしてるよ!そんなこと言える人間はそう多くない!

Q. マジかよ!君は俺に自分のことをクソみたいに思わせるな。IQはいくつだ?NASAで働く機会をどうやって手に入れた?

A. ハハ、正直言ってIQはわかんない。
僕の高校は最上級生に研究のメンターシップを要求してるんだ。高2の頃に僕は、従来より費用効率が高くて効果的な水素燃料電池を設計して、NASAの支援を求めた。(文字通り、彼らのナノマテリアル研究所のトップに連絡した。カーボンナノチューブを扱いたかったから。)そして彼女は僕の上司(今は「元」上司になっちゃったけど)へと連絡を取らせたんだ。彼が人手を探しているときに働かせてくれるか尋ねたら、彼はOKしてくれた!不幸にも結局はうまくいかなかったけどね。:( 

メンタリング(Mentoring)とは、人の育成、指導方法の一つ。指示や命令によらず、メンター(Mentor)と呼ばれる指導者が、対話による気づきと助言による被育成者たるプロテジェ(protege)ないしメンティー(Mentee)本人の自発的・自律的な発達を促す方法である。

プロテジェがメンターから指導・支援・保護されるこの関係をメンター制度(メンターせいど)ないしメンターシップ(Mentorship)と呼ぶ。

Wikipediaより 

 └・そういうのが必須な高校ってどういう高校?私立?すごくお金持ちの公立高校?


  └(OP) どっちでもないよ。とても小さな田舎の高校に通ってる。高校があるのは州でもっとも貧しいエリアのひとつだ。でも地域のガバナーズ・スクールにも行ってるよ。そこでSTEM(科学・技術・工学・数学)コースのほとんどを教わったし、今も教わっている。NASAのキャンパスにも近いんだ。

   └・ガバナーズ・スクールってなに?初めて聞いた。

    └(OP) マグネット・スクールみたいなもの。終日行ってないことを除けばね。僕が行ってるガバナーズ・スクールはSTEMに特化してるんだ。

マグネット・スクールとは、アメリカ合衆国発祥の公立学校の一種である。魅力的な特別カリキュラムを持つため、学区あるいは周辺地域に至るまでの広範囲から、子供たちを磁石(マグネット)のように引き付ける学校という意味で命名された。学術とくに自然科学やテクノロジーなど理数系の特化教育を掲げる学校が多い。 
Wikipediaより

Q. どっから費用効率の高い水素燃料電池の設計を思いついたの?何もせずに寝っ転がって「もしこうしたら……」って考え出したの?

A. 実はHowStuffWorks.comの記事から。:)

Q. 高校生にしちゃかなりすごいことやってるじゃないか!学校で知識を得たのか?それとも先進的なテクノロジーに元々興味をもってた?どうやってそんなに賢くなったんだ?すごく不思議だ

A. ハハ、人に思われるほど賢くはないんだ。正直言って自分を売り込む方法をよく知ってるだけさ。
ほとんどの知識は学校から得たものじゃないよ。ずっと、ありとあらゆることのほとんどに関心を持っていたんだ。僕はちょっと不眠症気味で、たくさんの眠れない夜をただWikipediaを読んで過ごした。去年物理のコースを取ったけど、それは僕が既に読んでいた概念の数学的な表現を理解する手助けをしたよ。
それから、僕はずっとコンピュータとプログラミングにハマってる。そのことも目的に向かって踏み出すのに役立った。でも実際に僕をNASAへと導いたのは、それまでにやっていた、従来より費用効率の高い水素燃料電池の研究だった。

 └・>ハハ、人に思われるほど賢くはないんだ。
  >それまでにやっていた、従来よりコスト効率の高い水素燃料電池の研究
  ……。

  └・現実と向き合え。もし彼が賢いことを認めたら、みんな彼を嫌いになるだろ。

   └・俺は現実と向き合う心の準備ができてないんだ!

Q. 僕の初仕事は薬局でだったのに……

A. ハハ。僕の初仕事は小さなWeb開発会社でだったよ……中2のときに、趣味を仕事にするとその趣味が嫌いになるってことを学んだ!ハハハ。

 └・変だな。俺はまだ自分の仕事を愛してる。

Q. 君はアジア人かな?


A. いや、アメリカ生まれの白人だよ。ハハハ!バージニアの人口300人の田舎町に住んでる。:P
 
 └・「遠い空の向こうに」とは関係が薄いように思えるが……念のため聞くよ。あの映画の舞台になった町に住んでるわけじゃないよね?:P

  └(OP) ハハ、今のところは。:P

『遠い空の向こうに』(原題: October Sky)は、1999年アメリカ映画
1957年10月ソ連から打ち上げられた人類初の人工衛星を見たアメリカ合衆国、ウエスト・ヴァージニアの小さな炭坑の町の高校生4人が、ロケット作りに挑戦する。ロケット作りを通して、時にはぶつかり、また励まされながら成長していく過程を描く。
主人公の1人であるホーマー・H・ヒッカムJr(元NASA技術者)による実話を元に製作された。
Wikipediaより 

Q. テレビゲームとかやるの?

A. うん!Civ5、ファークライ、JUST CAUSE、ポケモン……僕は熱心なゲーマーだ。:)



Q. 両親は何やってる人?

A. 母親は大学を卒業せずに新聞社で働いてる。父親は工場のマネージャー。

Q. どんな実験をしていた/しているの?


A. プラズマアクチュエータのモデルを開発してたんだ。基本的に、可動パーツを持たないメカニカルなフラップみたいなものだよ。空気をイオン化し、装置を取り巻く非イオン化空気に推進力を授ける非熱プラズマを生み出すことで作動する。でもこれは大型機では使えないんだ。十分な推進力を生み出せないから。僕のチームはそれを変えようとしていた。
微小重力の中では、ISS(国際宇宙ステーション)で使用するための少量の局所的酸素のためのプロジェクトを開発中だよ。基本的にただの法外な値段の電解ユニットだ。 

 └・へぇ……それは……

 └・何を話しているのか全然わからない……

 └・いくつかの単語はわかったぞ!

 └・>ハハ、人に思われるほど賢くはないんだ。

 └・君が英語で答えるAMAもやってもらえるかな?

  └(OP) アハハ、申し訳ない!もっと説明したほうがいい?

   └・頼む。ELI5(俺を5歳児だと思って説明してくれ)

    └(OP) ELI5バージョン:
集中定数回路のモデルを作っていた。(空気を分解する高電圧のデバイスのためのこんな感じのただの回路だ。空気を分解したときに、電子はいろんなものに勢い良くぶつかって、相手に推進力を授けながら飛び回る(誰かが君にぶつかってきた時のことを想像して))。でも原子核(これが重さの~99%)はまだ残ってる。プラズマアクチュエータはこんな感じ。 
電気分解は比較的シンプルだ。水を水素と酸素に分けるだけ! 

      └・君はいい奴だな。

Q. とてもクールだね。何のためのアクチュエータ?

A. 近い将来、今のフラップと交換できたらと思ってる。可動パーツが無いし、比較的ローパワーだし、フロー制御も優れていて、たくさんのポテンシャルを持ってるよ。

Q. いつか君が設計したフラップがついた飛行機に乗れるのかな!

A. 設計はしてないよ!僕はそれを集中定数回路の回路図としてモデリングしただけさ。ハハ。値しない名声を僕に与えないで。:)

Q. 僕は14歳のときに内燃機関から発生する汚染を減らすことができる市場製品を作ったけど、君ののほうがよっぽど複雑そうだ!(笑)

A. とんでもないよ!君の製品は素晴らしそうだ。アクチュエータと燃料電池は実は本当にシンプルなデバイスなんだ。それに科学ってのは、明らかに限界までシンプルなものを好んでる。:P

Q. みんながNASAについて聞いてるから、僕は高校について聞こう。高校生活で最高のことってなに?

A. 周りの人たち!素晴らしい友人たちがいるし、後悔はほとんどない。自分が愛するコミュニティに溶け込んでるし、基本的に最高の時間を過ごしてる。友だちは常に何より重要だ!仕事もかなり真剣に取り組んでるけどね。

Q. 友だちは君がNASAで働くことにどうリアクションした?

A. ほとんどの友だちはそんなに目新しいことだと思わなかったよ。僕はそれまでに学校でいろんなことやってたから、あまり衝撃的じゃなかったみたいだ。彼らが嫌がったのは僕が忙しくしてたこと。一緒に遊ぶ時間を減らさなきゃいけなかった。最悪だよ。

Q. で、君はジョック(訳注:アメリカのスクールカーストの頂点に立つ運動部のいじめっ子)たちからどういう扱いを受けてるワケ?

A. えぇと、僕は運動場を走る。だから、かなり良く?
小さな高校だから皆すごく仲が良いよ。(皮肉っぽい質問を受けたけど、僕は正直に答えてる。)それに僕は生徒会長だから、1番の嫌われ者ってわけじゃない。

Q. ガールフレンドがいたことある?

A. ハハハ、素敵な女の子と付き合って1年以上になるよ。

Q. 機械工学の学生だよ。すごくクールだね。実験が上手く行って先に進めることを願ってるよ。君が言ったみたいに、自分を売り込むことが仕事の半分だ。たくさんの人たちが、メールを送るだけで簡単に上の人たちと連絡を取れるって気づいてないんだよね。ともかく。うまくいってておめでとう。将来君が大きな仕事をすることを楽しみにしてるよ。

A. ハハ、ありがとう!今の時点では大学に行く準備をするだけだよ!!

 └・どこの大学に行くつもり?

  └(OP) ペンシルベニア大学。コンピューターと認知科学の両方を専攻して両方の学位を取るプログラムへの早期決定を申し込んで、受理されたよ。タフツ大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)、コロンビア大学、カーネギーメロン大学も考えてたんだけど。

ペンシルベニア大学英語University of Pennsylvania)は、米国ペンシルベニア州フィラデルフィア市に本部を置くアメリカ合衆国私立大学である。1755年に設置された。

常に米国大学ランキングでトップ5またはトップ10にランクインし、世界大学ランキングではトップ20に入り、米国を代表する名門大学として不動の地位を保っている。

Wikipediaより 

    └・君、さっき「そんなに賢くない」って言ったじゃないか……

    └・なんでMITを選ばなかった?

     └(ザック) MITは好きだよ。でもボストンはあんまり好きじゃないんだ。それにMITは大学より大学院って印象があったから。

Q. ヘイ!僕もNASAでインターンしてる高校生だよ。同じく最上級生だ。君もゴダード宇宙飛行センター

A. 残念だけど違うよ!ラングレー研究所だ。

Q. NASAで給料はいくらもらってたの?

A. 全然。完全に自分の時間だった。もし大金を稼ぎたいなら、あそこで働くことはお勧めしないな……たいてい学術研究機関の給料はそう良くないよ。ほんとに悲しいことに。企業の研究開発は稼げるよ!

 └・NASAでもゴダード宇宙飛行センターは高校生のインターンに給料をくれるよ。:P

  └・ジョンソン宇宙センターは普通のインターンにはくれるけど、高校生にはくれない。

Q. NASAでのインターンシップとペンシルベニア大学合格おめでとう。将来のプランや夢は?宇宙開発分野で続けていくつもり?他にやりたいことがある?

A. どうもありがとう!今のところ計画は無いよ。しばらく講義に集中するつもりさ。コンピューターと認知科学を学ぶから、たぶんサイバネティックスかAI(人口知能)かも?

 └・絶対「ターミネーター」の世界を現実にしないでくれよ!

  └(OP) そそのかさないでよ。イヒヒ。

 └・僕はAI分野にもっと才能が集まってほしいと思ってる。Siriやテレビゲーム、検索システムみたいな実用的なAIと、もっと高度なAIとの間に大きな偏りがあるんだ。君がそのギャップを縮めることが出来たらすごいことになるだろう。

  └(OP) 僕は自動ブレーキや緊急対応システムみたいなレスポンシブ・オートモーティブ・システムの研究にすごく興味がある。去年、同じ高校の女の子がスピードの出し過ぎで亡くなってしまって、防ぐことが可能な死に終止符を打ちたいと心から思ったんだ。

Q. NASAで「働く」ってどんな気分?きっと最高なんだろうな!

A. 「ヘイ、僕はNASAで働いてるんだ」って言うのは、正気と思えないぐらい最高の気分さ。
でもあそこで働いている人たちは彼らの仕事に対してとても真剣なんだ。正直、ときどきすごく息詰まりに感じたよ。ハハ。強烈な個性は一切無かった。キャンパスはこの上なく面白みに欠けていたよ。

 └・NASAで働くことにはもうひとつアドバンテージがある。会話のとっかかりだ。「なぁ知ってる?俺、NASAで働いてるんだ」って言えるだろ。:P

  └(OP) ハハ、僕はそれに関しては謙虚でいようとしてるんだ。うちの家族は僕がNASAで働いていたことをみんなに教えるのが大好きだけどね。;)

Q. なんで辞めちゃったの?勤務時間とか職務とか決まってた?

A. 週に6時間働いていたよ。辞めたのは、2時間の通勤時間(それは僕の他の勉強に深刻な影響を与えてた)と性格的な対立が原因。

 └・対立って、誰との?

  └(OP) 研究のメンター(基本的に僕の上司。ハハ)。彼はメンターシッププログラムをあまり理解していなかったし、僕らはお互いあまりコミュニケーションを取ることが出来なかった(彼は外国人だったんだ)。
でも彼は僕が今まで出会った中で最も頭の良い人物の1人だった。それに彼と一緒に仕事ができたことに本当に感謝してる。たくさんのことを学んだ。

Q. 働いてる間、周りの人はよくしてくれた?

A. っていうと?

 └・つまり……周りの人たちは君が働いてる間手助けしてくれたり、会話してくれたりした?

  └(OP) その施設への紹介を別にすれば、答えは「NO」だね。それがそこで働く上で最悪な点の1つだった。僕は実年齢より年上に見られるから、ほとんどの人は僕のことを大学院生か新入社員だと思ってたんだ。ハハ。たくさんの時間と語られるべき真実を失ってしまった!

Q. それじゃぁNASAで働く上で最高な点は?

A. 学べること。すごくたくさんのことを学んだ。あそこの人たちは本当に彼らの評判に恥じないことをしている。ちょっと出来過ぎてるんだ。ひるんじゃうぐらいに!



Q. 同い年の人間にそういうポジションに就くためのアドバイスをくれる?

A. 単純に、自分をそのポジションへ押し出せ!NASAは高校生のための教育機会をたくさん持ってる。それを探し出すだけだ。支社かなんかにメールしろ。それが僕がやったことだ。 

Q. ハイ!僕は高校の2年生だ。NASAで、特にジェット推進研究所で働くことにすごく興味をもってる。なにかアドバイスある?

A. そこへ踏み出すことを恐れるな!僕がNASAのナノマテリアルの支社に連絡できたのは、カーボンナノチューブに興味があって、それが僕をNASAへと導いたからだ。 ただ君の情熱を調査すればいいだけだよ。君はやれる。安っぽく聞こえるのはわかってる。でもこれは真実だ。
僕に出来るただひとつのアドバイスは、君の研究への情熱を彼らに見せろってこと。その情熱で彼らを驚かせろ。幸運を祈る。:)

(追記)2014/6/23に同OPが新しく立てたAMAより。嘔吐惑星搭乗時の動画。

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044932高校生のうちから最先端の研究の場で学べるとはすごいですね。

(管理人は根っからの文系人間です。研究の説明部分や専門用語等、適切に翻訳できていない箇所や誤訳がありましたら、ご指摘願えるとたいへん助かります。)

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